今日も、引き続き耐力壁ジャパンカップのことです。

第4戦目は、

東京大学木造建築コース+金子建築の

「東濃桧の壁3~白糸の滝~」

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設計担当者が論文の提出に追われ、

時間が足りなかったと言っていましたが、

前日にやっと上下の貫の位置が決まったそうです。

その貫材は、厚さ60mmあります。

そして柱の脇には無垢材を面材として配置し、

足元は引き金物とビスにより固定してあります。

一方の前年度、総合優勝のチーム匠の壁は、

(アキュラホーム+東京大学木質材料研究室+篠原商店)

「紬~evolution~」。

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間柱を互い違いに配置し、中間部を帯材で拘束してあります。

材料は、桁以外はすべてシラカシを使用。

もちろん、非木造は使用していません。

東京大学の師弟対決の結果は、

右「東濃桧の壁3~白糸の滝~」の柱脚部の破壊により、

左「紬~evolution~」の勝利となりました。

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「東濃桧の壁3~白糸の滝~」の柱脚部を近くで確認しました。

柱の断面欠損がこれだけあると、貫が充てんされていても、

柱としては、少々弱いような気がしました。

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また、裏に回ってみますと、多くのビスが打たれてあり、

表面の美しさが、損なわれている感がありました。

これらのビスは加力によりめり込み、変形していましたので、

この後の解体では、ビスを抜くのに

かなりの手間がかかっていました。

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また、強度的には面材が効いていたようなのですが、

無垢材と言うこともあり、節の部分で破壊が起こっていました。

改めて、筋交い材などの節には注意が必要だと思いました。

今日も昨日に引き続き、耐力壁ジャパンカップのことです。

第3戦目は、

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秋田職業能力開発短期大学校の「クロスファイヤー」。

貫を筋交いのようにやや斜めにして、交互に配置してあります。

足元はオーソドックスに金物による固定です。

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もう一方の壁は、東北職業能力開発大学校の「ポリテクのX」。

こちらは、筋違いによる剛性と貫による粘りを

ひとつ壁に詰め込んであります。

そしてこちらは、非木材を使用していません。

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秋田対東北の学生さん対決の結果は、

どちらも破壊することなく、水平変位の少なかった

左側、東北の「ポリテクのX」の勝利となりました。

この対戦カードでは、「ポリテクのX」の筋交いが

程よく効果を発揮していたように思います。

「クロスファイヤー」の斜めにした貫効果につきましては、

今ひとつ、私には解読できませんでした。残念です。

今年も、9月15日、16日、17日の3連休に

富士山の麓にあります日本建築専門学校に於きまして、

第15回 木造耐力壁ジャパンカップが行われました。

毎年この大会をたいへん楽しみにしておりまして、

何とか時間を都合して、最終日の決勝トーナメントを

観戦して参りました。

今年は、壁耐力の考え方に新しい方向が見えたような、

レベルが高く、興味深い充実した大会でした。

そこで、今年も大会の報告をさせて頂きたいと思います。

かなり趣味の世界が入っていますが、

お付き合いいただけるとうれしいです。

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決勝トーナメントの第一試合は、

葉山出発が遅れ、開始時間までに到着することができず、

残念ながら観戦することができませんでした。

そのため、第二試合からになります。

第二試合の対戦は、

昨年のトーナメント優勝チームの

株式会社ポラス暮らし科学研究所の「BONE」。

今年は非木材を使用せず、貫と土台にイペ材を使用し、

背骨のようなシルエットの耐力壁です。

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対する、東京都市大学 大橋研究室の「LLサンド」です。

こちらも非木材を使用せず、柱を横架材で挟み込み、

めり込みで体力を発揮する壁です。

今大会このめり込み系の壁が大変多かったのが

ひとつの特徴です。

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対戦結果は、右の「LLサンド」の土台が割裂しましたので、

左の「BONE」の勝利です。

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「LLサンド」は足元で抵抗するように、

足固めを設けているのですが、

このように強い壁同士の対戦の場合、

相当な加力がされていますので、その強さ故、最終的に、

より強い部分によって破断が起こることになります。

如何にバランスの良さが大切であるのか身に沁みます。