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■ 第48号 ■

■□・・―――――――――――――――2011年06月08日

木の家を知る・建てる・暮らす

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□ 目次

【1】 こんな感じに過ごしています 「 一色海岸書店へ 」

【2】 「 日本の国民性と間取り 」

【3】 家づくりのことば  「サネ 」

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【1】 こんな感じに過ごしてます・・・

こんにちは 田村です。

御用邸のある海岸として知られる一色海水浴場の入り口に 先月14日「一色海岸書店」(2011年7月の期間限定オープン)という本屋さんがオープンしました。

と言っても商店街にあるような本屋さんではなく 美術作家として広く活躍されていた永井宏さんがアトリエとして利用していた古い民家を開放して 永年大切に読まれていた500冊以上にもなる本(美術書・音楽・写真・文芸などなど)を並べ販売している 小さな小さな本屋さんです。

永井さんはご自身でもいくつかの本を出版されています。10年ほど昔友達に勧められて読んだ本には 葉山でゆったりと過ごす生活はいいものなんだという内容が書かれていて 当時 都会にばかり目を向けていた私は 小さな衝撃を受けました。

そして 3年ほど前友人の結婚パーティでご本人にお会いした時 始めは誰なのかわからなくって 長髪の大きな体の小洒落たおじさんが お酒で顔を
赤くしながら バンジョー片手に唄を披露したかと思えば 詩の朗読をはじめたり 「この人はいったい??」何者なのかと 遠巻きに見ていました。
友人に「永井宏さん」だと教えてもらった時は「エェ あの本を書いた人が!!」と 失礼ながらも想像していた雰囲気と違っていたことに 大きな衝撃を受けました(笑)もっと小柄で繊細なタイプだと想像していたのです。

ですが 少し会話をしてみると とても気さくで優しいオ―ラが感じられ 沢山の人が永井さんの廻りに集まってくるのがわかったように思えたのを覚えて
います。そんな方なので 本に出会って葉山に移り住んで来た人も大勢いてクリエーターという人達は少なからずとも永井さんの影響を受けて活動をしているようです。

今年4月オープンを間近にして 残念なことにご病気の為永井さんは天国に旅立たれました。

「葉山という気候風土にあった、まあ、いつも変わらぬのんびりとした空間をひとつ作る(書店オープン前に書いたあいさつ文より)」という思いを受継いだ
お仲間達が 金・土・日の週末3日間お店を開いていると言う事で 日曜日にお邪魔してきました。

玄関を上がってすぐの部屋の壁に沢山並んだ本たちは 今では入手困難と思えるものがほとんどなのと 永井さんの思いが詰まっているようで手に触れて良いのかと 少しドキドキしました。
興奮も落ち着いたころに 素敵な写真集を見つけ値段もとても良心的でしたので 迷わず購入しました。

店内には永井さんファンと思われるお客さんが殆どでしたが 永井さんを知らないと言う方でも 宝物さがし感覚で十分に楽しめると思います。
7月中旬までの期間限定を予定しているそうなので 初夏の海岸を散歩しつつその帰りに覗いてみてはいかがでしょうか。

一色海岸書店 003

入り口奥に見えるのが 永井さんのバンジョー・・。

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【2】 「 日本の国民性と間取り 」

こんにちは、設計の田中です。

最近、NHKの朝の連続テレビ小説「おひさま」にはまっています。
物語とは別に、番組を見ていると当時の暮らしの様子から、住まいに対する考え方が気になってきたりします。
特に、1900年代の前半の安曇野で、女学校に通う主人公に個室が割り当てられているという点が、主人公の父親はいったいどんな人物なのだろうかと想像を膨らましてしまいます。
ということで、今日は日本の変わらない国民性と、移り変わる間取りのについて書いてみようと思います。

漠然と、日本の住まいの形態は「寝食を共にする」などと言われ、最低限の座敷で形成されていたことは良く知られています。
それが、文化、生活レベルの発展につれ、少しづつ変化し、形を変えていきます。

例えば、川崎市のたてもの園にあるような江戸時代の初期から中期の有力な農家の家では、座敷の奥に床の間のある一室を設けるようになり、お偉いさんを一晩泊められるようになります。
また、玄関は元々侍しか設けることが許されていませんでしたが、江戸の末期になると、やはりお偉いさんを招きいれる為として、立派な町民には玄関が設けることが許されるようになります。
一般の家庭でも、明治には一室しかなかった座敷が、表座敷と奥座敷に分けられるようになり、お金持ちの家では西洋に習って洋風な客間が南側の明るい位置に配置されるようになります。
日本の住まいでは、住んでいる家族より、お客さんを招くことがとても重要視されてきました。

一方、西洋の住まいの考え方は、子供部屋にも大きな影響を与えていきます。
それまで、日本の子供は、家のどこかで寝て、人の隙間を見つけて勉強していましたが、大正時代に入り、欧米の教育方針が伝わると子供部屋が流行します。
自立心を養うための子供部屋の考え方は、日本人の立身出世感を刺激し、経済発展と共にまたたく間に広がります。

こうした客間と子供部屋のある洋風な住宅は、文化住宅と呼ばれとても流行したそうです。
文化住宅の間取りの考え方自体は、その後もつい最近まで大きく影響してきましたが、土地事情、人付き合いの変化から玄関脇の客間は次第に無くなり、お客さんを招き入れたい気持ちは「友達の集まるリビング」として、立身出世の思いは「東大生の勉強方法」から「勉強コーナーのあるリビング」へ共に姿を変え今も間取りに活かされています。

日本のお茶の間文化が実は今も続いていることが面白いところです。

設計:久保歩美・田中伸二
松匠創美の「家づくりの考え方

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□家づくりのことば・・

私(田村)が 事務所内で飛び交う会話の中に「今のは何だろう?」と思う建築用語が たくさんあります。
なんとなく聞き覚えのある言葉や 初めて耳にする言葉などをここで少し紹介したいとおもいます。

○サネ

次の「ことば」は何がいいかと考えていた折のミーティングで 出てきたサネということば。
意味も漢字もわからないので 田中が貸してくれている建築用語辞典でこっそり下調べしてみました。

辞書には「サネハギ」と載っていまして 木の板を接合する方法の事だと説明されていたのですが その漢字表記をみて「あっ!!」と思わず声が出てしまいました。

実は 材木屋さんから送られてくる材料の明細伝票で ずっと気になっていたことががあったのです。 それは床材の板で [等級:実付き]と書かれていました。それを見付けた時 実(み)って・・木の実のことかな?実が付いたままの状態で送られてくるのかな?と そんな板を見たこともありませんでしたので とても不思議でたまりませんでした。

それでも 実付の板は“枝付きレーズン”みたいに どことなく高級な床板なのかもしれない 野菜も土付はいい品だと言うし・・・等級が高い板なんだなぁ 木材も色々あるもんだと 毎回そのまま流していました。

そんなこともあった中今回調べたサネの漢字が『実』と書かれていて もしかしてあの「実付き」とは「さねつき」のことではないかと ピン!ときたのです。
会話だけで聞いていたら解らなかった「サネ」が「実」だと判明して 興奮してしまいました まさに“アハ体験”です(・・ちょっと古いですか。)

板と板を繋ぎ合せるために一方に凸 他方を凹に加工するのですがそのデコ凸がサネ=実と言う訳です。
つまり 実付はサネ加工された(板)ということなんですね。

等級とは仕様のことでした まんまとひっかかりました・・といっていいのやら 変に考えるのは私だけなのでしょう・・反省です。

○実(サネ)=一方の板の側面に作る細長い突起。
○実はぎ=一方を凸、他方を凹に彫って合せる板の接合方法のこと。「建築用語辞典 岩波書店」より

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☆お付き合いいただきまして ありがとうございます☆

出会い・つながる・木の住まい
有限会社 松匠創美

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