松匠創美のメールマガジン「木の家を知る・建てる・暮らす」

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■ 第46号 ■

■□・・――――――――――――――――2011年05月11日

木の家を知る・建てる・暮らす

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□ 目次

【1】 こんな感じに過ごしています 「 葉山芸術祭 」

【2】「 公共建築物(低層)は木造化を原則義務化 その2 」

【3】 家づくりのことば  「 ヒキテ 」

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□こんな感じに過ごしてます・・・

こんにちは 田村です。

今年も開催されています 葉山芸術祭は今回で19回目。

「芸術祭」という名前が仰々しいように私には思えますが 芸術家でなくてもモノづくりが好きな人なら誰でもが参加できる 町全体を使ったお祭りです。

「ひとつの場所に集まって」というスタイルではなく 参加者が個々に自宅を開放したり カフェレストランなど借りて 作品の展示、販売や簡単なお料理などを用意してお客さんを迎えます。

お客さんはパンフレット片手に葉山の町を散策しながら お目当ての会場を目指します。(最近では 鎌倉や逗子・横須賀地区の参加もあって移動するのはちょっと大変ですが・・・。)

葉山に長く住んでいる私でも初めて通る小道や 路地裏など新しい発見もあったり 普段はおじゃますることのない素敵なお住まいを拝見できたり お話を伺ったりすることも楽しみの一つです。

いくつか廻った中で ご紹介したいのが8日(日曜)から始まった「手ぬぐい・りんりん」こと菅原恵理子さんの『葉山生まれの手ぬぐい展』。

ご自宅ではないのですが カフェレストラン「engawa」さん(2021年4月以降移転予定)での展示、販売です。
こちらの会場は 御用邸(一色海岸)近くにあって 天皇家侍医が長年住んでいたという築80年余の古民家を利用したお店になります。

engawaという名の通り 長くて広い縁側のある店内に 菅原さんが今まで集めてこられた沢山のコレクションと ご自身がデザインされた手ぬぐいが並べられていました。

20110508 てぬぐい 001

森戸海岸で毎年夏に行われる盆踊り大会用の手ぬぐいなど 葉山の風景をモチ―フにしたデザインをされている菅原さんにお会いできるのを楽しみにしていたので 初夏に映える素敵なお着物を着たご本人に声をかけて頂いた時は少々興奮してしまいました。

コレクションの中には珍しい染めの物があって 私が理解できるまで丁寧にお話をして下さったり 江戸時代からあるユニークな柄について説明して下さったりと 楽しい時間を過ごすことができました。

20110508 てぬぐい 003

期間は5月13日(金)までですが ご興味のある方は是非足を運ばれてみて下さい。

余談ですが 葉山に住んでみたいなぁ とお考えの方には実際暮らしている方たちと会ってお話ができる機会にもなりますので 個々の会場を廻ってみて「どんな生活をしているのかな?」と参考にされてみてはいかがでしょうか。

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□ 「公共建築物(低層)は木造化を原則義務化 その2」

こんにちは、設計の田中です。

前回、新しい法律「公共建築物木材利用促進法」が施行されるに至った時代背景をご紹介させて頂きました。
今日は、前回の続きで「公共建築物木材利用促進法」の内容についてご紹介したいと思います。

公共建築物木材利用促進法は、現状7.5パーセントと木造率が低い公共建築物の木造化を進める法律です。
条文では、地球温暖化の防止、循環型社会の形成、森林を有する国土の保全、水源のかん養、経済の活性化等が目的と記されています。

この法律により、国や地方が整備する低層公共建築物は全て原則的に木造となります。
今後、引き続き細かい基準を整備していくようです。

国や地方が建てる施設以外にも、民間が建てる公共性の高い建築物には木造化が求められていきます。
具体的な用途としては、学校や高齢者施設、病院、診療所、社会教育施設、運動施設、旅客施設や高速道路の休憩所までもが含まれています。

また、建築物の木造化が困難な場合にも内装材や備品、消耗品などを木質化することを促進してもいます。
その他、林地残材と呼ばれる枝葉や、間伐材を有効活用する為に、運搬費や木質バイオマス利用の支援も行います。

しかし、日本の林業再生や木材自給率UPを目指してつくられた法律とは言っても、国が国産材ばかりを率先して使ってしまうと、WTO協定の「内外無差別の原則」に反してしまうようです。

そこで、法律では、製造業者の大臣認定制度を新設し、認定業者に対しては改善資金の無利子融資や返済期間の延長も用意しているようです。
認定制度は、木材産業の技術開発、品質安定にも効果をもたらし、国内の林業の競争力の向上にも繋がると思います。

国のこうした取り組みは、今後の価値観や理解に大きく影響してくるように思います。

これから建築業界では、戦後の非木造化政策で建てられた公共施設が建替えの時期に入ってきますし、団塊の世代が徐々に定年を迎え、高齢者施設の建設がどんどんと盛んになってきます。

山に眠る資源としての杉や桧もまた、まさにベビーブームのように植林されたものでもあります。

こうしたことから、木材利用が一時の波で終わってしまわぬように見据えていく事が大事だとも思いましたが他の文化には無い、資源を育ててそれを循環させる木の文化に、また一歩近づいた事を喜びたいと思います。

設計:久保歩美・田中伸二
松匠創美の「家づくりの考え方

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□家づくりのことば・・

私(田村)が 事務所内で飛び交う会話の中に「今のは何だろう?」と思う建築用語が たくさんあります。
なんとなく聞き覚えのある言葉や 初めて耳にする言葉などをここで少し紹介したいとおもいます。

○ヒキテ

毎日生活している中で よく目にしたり触れていたりするモノなのに あたり前過ぎて気にかけていなかったのが ドア(建具)や家具などの扉の開け閉めをする際に手が触れる部分のこと。

大体 握る物は取手(トッテ)と言ったり グリっと動かす物はハンドルと言ったりして細かい事は気にせずに過ごしていましたが 例えば 形状が同じでもサイズが違えば ドアなら取手で家具の扉ではハンドルと呼んだり・・と案外複雑なモノもあるということを 久保が教えてくれた時は絵付きのメモ用紙をしばらくの時間 じーっと眺めてしまうほどでした。

どうして気にするようになったかと言うと キッカケは「ヒキテ」という言葉を知ったからです。

松匠創美の家づくりでは室内の空間を上手く利用するため 引戸(ヒキド)を利用します。(ドアは開閉する際のスペースが意外と必要です。)
その引戸に付いているのが「引手(ヒキテ)」になります。

(いつもながら)ミーティングの時間 引戸の話になり引手が登場して・・・・ なんのことだろう?と悩んだのです。

今を思えば自宅にも引戸はありますから 何度も触れているモノなのに取手くらいにしか思っていませんでした。

しかし 久保の描いてくれた絵には取手やハンドルは(冒頭でも言いましたが)手で握ったり掴んだりできる突起した形状ですが 引手は指先を引っかけて使うよう凹んだ形状をしているので 取手という名前では可笑しいはずです。

また引手には 手掛[手掛引戸](テカケ)と言って 凹み部分に指先がさらに ひっかかりやすくなるよう部分的に競り出した形状をした物もあるのです。
こちらは主に家具など 手前に開く扉に使う事が多いようです。

こうして書くだけでも 本当に複雑ですね。

扉には「ツマミ」などもありますし 皆さんもご自宅を新築または改修される際は そういった細かい部分にも注目して検討されると 面白いのではないでしょうか。

○引手(ひきて)=建具、引出し、箱のふたなどを手前に引くか、横に動かして開閉するときに手を掛けるもの。(「建築学用語辞典」岩波書店より)

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■ 第45号 ■

■□・・────────────────2011年04月27日

木の家を知る・建てる・暮らす

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□ 目次

【1】 こんな感じに過ごしています 「 無理なくできることを 」

【2】「 公共建築物(低層)は木造化を原則義務化 その1 」

【3】 家づくりのことば  「 イラカ 」

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□こんな感じに過ごしてます・・・

こんにちは 田村です。

電力の供給不足を機に 「電気に頼らない生活を」という久保の考えから事務所の珈琲メーカーを マシンから*フレンチプレス式のポットに変えました。

粉と水を入れて スイッチオン!でお手軽だった今までと違い お湯を沸かし飲みたい量をビーカーで計り・・・4分待ってという手作業を教わった時は 美味しく入れられるかなぁ。。。と少々不安になりました。

でも 新しくてピカピカに美しく輝くステンレス製のポットを使ったその日に 何だか気分も明るくなってきました。

「節電しなくちゃいけない!」というプレッシャーを少なからずも感じて過ごしていたので 無理なく気持ちよく暮らしていけるんだなと気づかせてもらい 自分も気分良くできることはないかなと考えました。

そこで 背中の中ほどまであった重く長い髪を 思い切って肩まで短く切りました。
節電とどんな関係が?と思うかもしれませんが シャンプーで使う水の量も ドライヤーで乾かす時間もかなり使っていましたので イメージも変えられ さらに自然と節約できると思ったのです。

さっぱりして清々しい気分になった美容室の帰り 寄り道したセレクトショップでポットと同じメーカーのタンブラーを見つけました。
ポットと同様 そのデザインと保温性に一目惚れしてしまい 気分も良かったので迷わず購入しました。

それまで3年間使っていたタンブラーは 母親が使ってくれることになり 無駄に捨てることなく済みました。
短くなった髪も 自分で思った以上にシャンプーとドライヤーの時間が短縮されたので その分湯船にのんびり浸かったり眠い時は早めに布団に入れたりと 余裕ができて得した気分です。

不安だった珈琲を入れることも 2・3日も過ぎた頃には手順も身に付いて 手作業だけに今まで以上に美味しく入れられるよう意識するようになりました。

「珈琲美味しい♪」と言う声もチラホラ聞こえてきたりして。

慣れてしまえば何でもないこと もっとシンプルに生活して行こうと思います。

*-フレンチプレスとは-
フレンチプレスは、ヨーロッパではとてもポピュラーな圧縮式のコーヒーメーカーのこと。もともとイタリアから始まったといわれています。第二次世界大戦後、フランス・パリのカフェでよく使用されるようになり、「フレンチプレス」と呼ばれるようになりました。
bodum」さんのHP

2011 0426 たんぽぽ 005

こちらは 震災後いつも持ち歩けるようにと買ったSIGGのボトル。 パンダ来日記念ということで(笑) 事務所のドアを背景に・・。

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「公共建築物(低層)は木造化を原則義務化 その1」

こんにちは、設計の田中です。

恐らく、一般にはあまり知られていない事だと思うのですが、昨年の10月に「公共建築物木材利用促進法」と言う法律が施行されました。
この法律の注目点は、「国や地方が整備する低層公共建築物は原則的に木造とする」という内容です。
林業が衰退したと言われている日本で、とても大きな起爆剤になりそうな気がしています。

今日は「公共建築物木材利用促進法」が施行された背景について時代を追って紹介したいと思います。

戦後、日本は95パーセント以上を国内の木材を活用して建物を建てていましたが、復興事業が進む中、深刻な木材不足に陥ってしまい、徐々に木材を輸入するようになっていきます。
一方で国は将来の建築資材として有効な杉や桧の植林を勧めていきました。

更に、急速な経済成長は続き、やがて団塊世代の住宅需要が高まってきます。当然のことながら、植林されたが杉や桧が育つにまだまだ時間が足りません。
需要拡大と好景気によるコストメリットもあり、輸入建材が着々とその量を増やしていく一方、国産材は正当な価格で買い取られなくなります。
買取価格の低下により、山を維持管理する費用は得られなくなり、林業が成り立たなくなって行きます。

バブル崩壊後も国産材は低迷を続け、木材自給率の低下は続きます。そして、1990年代後半にはついに10パーセント台にまで落ち込んでしまったそうです。
その頃、戦後植林された杉や桧が、やっと伐採期を迎えることになります。
しかし、売れる木材として安価で供給が安定していた輸入材に対して、国産の荒廃した山で育った杉や桧は、品質にばらつきがありました。また、乾燥技術の方もすっかり海外に劣ってしまっていていたのでした。

国産材の悪戦苦闘は続きます。

やがて21世紀に入り、原油高とも重なり、輸入建材との価格差は次第に埋まり始めます。
更には、温暖化ガス問題、世界でも有数の木の文化、地方の雇用問題、山の治水量と災害問題、様々な方向から林業の大切さが取り上げられるようになって行きます。
粘り強い努力もあり、国産材の木材自給率は約30パーセント近くまで回復してきています。

このような背景の中、木材自給率を50パーセントまでに高めることを目標に「公共建築物木材利用促進法」が制定されました。
また、文部科学省や林野庁も木造校舎の建設に前向きに検討を進めています。

松匠創美では、今まで国産の無垢材で家づくりをしてきましたが、ゆくゆくは、久保がブログで書いていた様に県産材で家づくりをしたいと考えています。

この法律が山の環境保全と、それを取り巻く資源を循環させる社会づくりに一躍を担ってくれると期待しております。

次回は、「公共建築物木材利用促進法」の内容について紹介したいと思います。

設計:久保歩美・田中伸二
松匠創美の「家づくりの考え方

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□家づくりのことば・・

私(田村)が 事務所内で飛び交う会話の中に「今のは何だろう?」と思う建築用語が たくさんあります。
なんとなく聞き覚えのある言葉や 初めて耳にする言葉などをここで少し紹介したいとおもいます。

○イラカ

お昼ご飯の時 田中に「鯉のぼりの歌と言えば・・・何?」と聞かれ そりゃ「屋根よ~り たぁーかーい~♪」でしょ と唄ってみました。

それもそうなんだけど もう一つ「イラカの波と雲の波~」ってのもあるでしょう?と言われて あぁ そういえば・・・と子供の頃は 出だしの「イラカの波~」って何のコト??と 意味も解らず唄っていたんですよね と思い出しながら言うと 「そのイラカって今は知ってるの?」と聞かれました。

「瓦のことですよね。」と答えられたのですが・・実は意味を知ったのは松匠創美でお仕事をするようになってからですので 恥ずかしながら何十年も知りませんでした。

この歌を教わった頃 私は都内に住んでいました。

バブル絶頂期の渋谷区には ビルが建ち並び始め瓦葺きの屋根がほとんどなかったので 瓦をあまり見たことがありませんでしたし 先生も意味までは教えてくれませんでした。

葉山でも 最近では瓦葺きの屋根を見かける事は少ないですが この時期 波打つ瓦の屋根に勢い良く泳ぐ鯉のぼりを見かけると 歌詞の力強さは 元気な男の子に育って欲しいと言う親の願いが込められているんだなぁと 少し解るような気がします。

瓦は重いから・・と敬遠されがちだそうですが 日本の風景には欠かして欲しくないと思いました。

○甍(いらか)=瓦 また 瓦葺きの屋根。「―の波」
大辞泉/監修:松村明 出典:小学館より

鯉のぼり」 の歌載ってます。
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■ 第44号 ■

■□・・────────────────2011年04月13日

木の家を知る・建てる・暮らす

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□ 目次

【1】 こんな感じに過ごしています 「桜(春)を感じられれば
いいんです。」

【2】「仙台 江戸から伝わるイグネの暮らし」

【3】 家づくりのことば 「いってこい階段」

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□こんな感じに過ごしてます・・・

こんにちは 田村です。

前回 つくしが顔を出しましたね・・・と書いたと思っていたら 葉山では 桜が見ごろとなっています。

今年はここ何年かで一番美しく開花しているんではないかと思うくらいの華やかさがあります。

2011 0412 さくら 006

近くに見えるソメイヨシノと 遠く山間に見える山桜がいっせいに咲いたのは本当に久しぶりで こんな贅沢はないなぁと 日本はなんて美しい国なんだろうと 改めてうっとりしてしまいます。

花びらが散ってしまう前にお花見でもしなくちゃ♪と張りきっていた朝に 喉がイガイガして どうも腫れている様子です。・・・次第には鼻水まで出る始末で 同時にクシャミも止まりません。

こんな時に風邪をひいてしまうとは。

外でお酒を呑みながらお花見が出来ないなら どうしたらいいの・・と悩んでいた時に閃いたのが この時にしか食べれない物で桜(春)を感じられればいいんじゃない と言う事です。

真っ先に向かったのは事務所近く 葉山元町商店街の中程にある和菓子屋「力餅家」さん。

この時期に出てくるお目当ての和菓子といえば「さくら餅」と「草大福」です。

塩漬けされた桜の葉と ヨモギを練りこんだお餅は どちらも餡子との相性が良く理想的な甘みで 香りも味も 桜(春)を感じさせること間違いなしです。

お目当ての品が買えて満足ながらも 後3回は買いに来たいなと思いながら「いつ頃まで 買う事ができますか?」と聞いてみると 「そろそろ終わりだね。」と残念なお知らせになってしまいました。

今年はこれで最後のさくら餅と草大福かぁ・・と鼻をすすりながらちょっと淋しい思いでいましたら 力餅屋さんのブログ(現在はFACEBOOKに移行)に力強く「柏餅 はじめました!」と書かれた柏餅の写真付きコメントを見つけてしまいました。

桜は終わっても ツツジに紫陽花・菖蒲と お花見もお菓子もまだまだ楽しめそうです。

あっ まだ葉山の桜は散っていませんので安心して下さい。

2011 0412 さくら 002_1

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「仙台 江戸から伝わるイグネの暮らし」

こんにちは、設計の田中です。

地震発生から1ヶ月が過ぎ、気がつけば春真っ只中。
深刻な話題が多い中、今週にも東北方面の桜も開花を迎えるそうです。
桜の開花は、何か復興への希望を持たせてくれるような気がしてとても嬉しい知らせです。

今日は、僕の希望のひとつ、いつの日か取り戻して欲しい仙台の「イグネ」について紹介したいと思います。

最近、2002年にNHKで放送された「イグネ 仙台平野に浮かぶ緑の島」という番組を見ました。

イグネとは、仙台の農家が暮らす広大な屋敷林のことで、番組は、今回の津波が押し寄せた、若林区が舞台になっていました。
ササニシキの田んぼの中に点々と浮かぶイグネの姿は、陸の松島のようで、とても美しいものでした。

イグネは、もともと江戸時代初期に仙台平野を開墾した農民が、奥羽山脈から吹き降ろす北西の風から茅葺屋根を守るために植林を始めたことにより始まります。以後、400年間にわたり先祖代々、少しずつ植林を続け今の姿になったそうです。

内部は、一番北西側には凍てつく風を防ぐ常緑樹が植えられ、その内側には果実のなる木、その内側には花の咲く草花が植えられ用水路から水を引き、まるで豊かな里山のようでもありました。

番組は、四季を通してイグネでの暮らしを紹介しています。

春になると、「種まき桜」と呼ばれる一番古い桜の花が咲き、稲の種まきの時期を知らせてくれます。
夏にはご先祖への感謝を込めて育てた花をお供えに代々のお墓参りへ
秋には採れたキノコ類が食卓にのぼり、野菜や果物も季節ごとに採れます。
来年の為の種に至るまでも買って来ることは無いそうです。
また、枯れ枝で「ほうき」をつくり、落ち葉を集め、籾殻はお風呂を沸かす為にも使います。

極めつけは、建て替える家の木材でさえも、イグネから伐採した木だけで建ててしまいます。
樹齢100年200年を超える木でも伐採し、世代を超えて暮らせるようにと大事に使います。
障子や下足入れに至るまでイグネの木を使い、そしてまた植林をします。

松匠創美が考えている「100年愛される住宅」の基礎となっている家と樹木の循環が、山の植林地とではなく、裏庭で行われていることにとても衝撃を受けました。

現在の家は茅葺屋根では無いので、イグネの持っていた本来の目的は無くなってしまったと主人は言っていましたが 「イグネから得たものは、イグネに返す」という習慣は、これからも続けていくと言っていました。

調べ物をする中で、続いていた物事がとぎれてしまうことを意味する、途絶えるの「途」は、古くは杜の都の「杜」の字も使われていた事を知りました。
今年の春は、「種まき桜」が咲いても、直ぐには種まきが出来ないのかも知れません。

でも、長く続いた習慣が杜絶えてしまわぬようにと願うばかりです。

設計:久保歩美・田中伸二
松匠創美の「家づくりの考え方

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□家づくりのことば・・

私(田村)が 事務所内で飛び交う会話の中に「今のは何だろう?」と思う建築用語が たくさんあります。
なんとなく聞き覚えのある言葉や 初めて耳にする言葉などを ここで少し紹介したいとおもいます。

○いってこい階段

形や段数は違っていても 階段はカイダンとしか思っていませんでした。

けれど先日のこと 木材を仕入れる際の伝票に「階段:上がり切り」と書かれていることに気が付き 上がり切り・・って何だろう?と思いました。
まずは自分で調べてみたところ 一直線で上り下りする階段のことだと解りました。

・・そういえば 円を描いた階段の事は「らせん階段」って言うんだったと思いだし 他にもまだ何があるんだろう?と興味が湧いてきました。

さらに調べてみると「行って来い階段」なるものが。

それは(中間に踊り場がある)折り返し階段の事だそうで  上がりと下りが同じ位置にあるので (高さは違いますが)行って戻ってくる動きから 「いってこい」というユニークな名前になったようです。

ことばの響きが面白いと思ったので 朝のミーティングで 次は「いってこい階段」を書いてみたいと報告すると みつけちゃったのね・・・と少し笑われながら「いってこい」はそんなに使われることはなくて 一般的には「廻り階段」と言うよ と教えてくれました。

でも 久保は「いってこい」を使うそうで もうひとつ面白い呼び方に上がり切りは「鉄砲階段」とも言うのだと 教えてくれました。
「どうして鉄砲なんですか?」と聞くと「真っ直ぐだからね。」と ストレートな答えが。

まだ他にもいくつかあるそうなので 外出した時にでも「単なる階段だ」と思わず これは何と言うのかな?と注目してみたいと思っています。

○行って来い階段=廻り階段・折り返し階段ともいう。階段の上りと下りが同じ側にあり、この階段は階段スペースを最小限に抑えることができる。

*階段= 上下階などへの昇降のために設けられた、異なる高さの床面をつなぐ段状の構造物のこと。「建築学用語辞典」岩波書店より

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出会い・つながる・木の住まい
有限会社 松匠創美

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