断熱等級は何等級が基準になる?等級を上げるメリットや注意点も

2024/5/27

年間を通して快適に過ごせる住まいをつくるには、断熱等級について知っておく必要があります。等級の基準は時代に合わせて見直されているため、最新の内容や今後の予定も知ったうえで、住まいの断熱性を考えるのがおすすめです。

今回は断熱等級の内容や地域による基準の違いを解説します。住まいの断熱性を高めることのメリットや、知っておきたい注意点も見ていきましょう。快適な住まいづくりにお役立てください。

断熱等級について

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」において決められている基準であり、断熱性の性能の程度を示すものです。内容や地域によって異なる基準について解説します。

断熱等級は7段階ある

1~7のレベルに分けられて おり、数字が大きいほど断熱性能に優れていることを表しています。基準に関する改正が重ねられていて、2022年4月に等級5、同年10月に6と7が新設されました 。

平成28年の省エネ基準と比べると、等級7は冷暖房にかかるエネルギーの消費量を40%ほど削減できる水準であり、等級6は30%ほど削減できる水準であるとされています。等級5は、ZEH基準と同等です。ZEH基準とは、年間の一次エネルギー消費量の収支を0以下にすることを目指した住まいです。

断熱等級はUA値という指標で表されます。UA値は「外皮平均熱貫流率」のことで、壁や天井、開口部を通じて室内から外へと流れる熱量を平均的に表したものです。UA値が小さいほど、断熱性能が優れていることを示しています。

こちらの記事では、より詳しくUA値を解説するとともに、α値やc値などほか数値に関しても紹介しています。ぜひあわせてお役立てください。

2025年4月より等級4が最低基準になる

見出しのとおり、今後はすべての新築住宅に等級4以上が義務化される予定 です。つまり等級4が最も低いラインとなります。等級5が新しく設定されるまでは、最も優れた基準であった等級4ですが、これは1999年に制定された水準であり、世界的に見ると優れた基準であるとはいえません 。

これから家を建てることを検討している場合は、2025年に等級4が最も低いラインになることを踏まえて、住まいの断熱性を考える必要があります。

地域によって異なる

日本は地域によって気候が異なるため、南の地域で断熱性が十分な住まいが、北の地域でも十分であるとは限りません。そのため、地域によって基準が異なります。

北海道や東北から九州・沖縄地方まで、地域区分が8つに分かれています。地域区分1が北海道で、地域区分8が沖縄とされています。

たとえば、九州では等級7に相当するUA値の住まいも、北海道では等級6相当とされるなど、同じような性能の住まいでも地域によって等級が変わってくるのです 。断熱性に優れた住まいにするには、お住まいの地域に設定された基準を知っておく必要があります。

断熱等級を上げるメリット

時代の流れとともに住まいの断熱性の基準が見直されており、国としても住まいの断熱性を高めることを推進する傾向にあるといえます 。なぜ住まいの断熱性を高める必要があるのか、断熱性を高めることで得られるメリットを5つ解説します。

室内環境が快適になり過ごしやすくなる

断熱性能は、普段生活するなかで目に見えてわかるものではありませんが、住み心地や室内環境に大きく影響を与えます。

屋根や外壁、床などの外気に接する部分に断熱材を充填し、窓やドアなどの開口部に断熱性能に優れたサッシやガラスを採用するなど、断熱性をアップさせることで、外の気温が室内に影響しにくくなります。

夏は外の熱気が室内に侵入するのを防ぎ、冬は冷たい空気が室内に入ってくるのを防ぎます。さらに、エアコンで快適にした室内の空気が、壁や窓を通して外に出て行くことも防げるのです。

このように、断熱性をアップさせると室内と外の温度差をコントロールでき、年間を通して室内環境が快適になり、過ごしやすくなることが期待できます。

健康改善効果が期待できる

断熱性を高めて室内環境を快適にすることは、健康面にもよい影響を与えることが期待されます。たとえば風邪を引きにくくなることや、手足の冷えが改善されるなどの傾向があります 。

温度差があると、人間の本能である体温調節機能によって発汗作用などがはたらきます。気温差の大きい時期は、無意識に自律神経が乱れて疲労がたまり、風邪を引きやすくなることが懸念されるのです。

断熱性の高い住まいは、家の中の温度を一定に保ちやすくなり、結果として体力低下を和らげてくれるため、風邪を引きにくい体づくりに役立つことが期待できます。

また、エアコンに頼った生活をしていると自律神経が衰えやすいですが、断熱性の高い住まいであればエアコンの使用を抑えつつ、快適な室内環境を整えてくれます。

ヒートショックのリスクが軽減できる

ヒートショックとは、急激に温度が変化することで血圧が上下し、心臓や血管に疾患を引き起こす現象です。暖かいリビングから寒い廊下や浴室に移動した際などの急激な温度変化に、体がついていけないことに原因があります。

めまいや立ちくらみといった軽度の症状のほか、呼吸困難や胸の痛み、心筋梗塞や脳卒中などの重度な症状を引き起こすこともあり、最悪の場合、死に至るケースもあります。

断熱性の高い住まいでは、部屋ごとの温度差をゆるやかにできるのが特徴です。冷暖房をかけて快適になった室内の空気が家全体に広がり、家の中の温度を均一にできるため、各部屋の温度差を少なくしてヒートショックのリスクを軽減できます。

電気代を節約できる

エアコンをよく使用する夏と冬は、電気代が高くなりがちです。夏と冬のエアコンの1日の消費電力の割合は、全体の電気使用量の30%を超えているという調査結果もあり 、エアコンの使い方を見直すことで、電気代の大きな節約が期待できます。

断熱性の高い住まいでは、たとえエアコンの設定温度を弱めにしても、快適な暖かさや涼しさを感じられるようになることから、節電につながります。電気代は毎月発生するため、家計への負担を継続的に減らせるでしょう。

断熱性によって室内の温度を保ちやすくなると、エアコンなど冷暖房機器の使用時間や使用頻度が減ることも期待できます。その結果、冷暖房機器の消耗を遅らせることも可能になり、修理や買い替えなどの出費を抑えることにもつながるのです。

補助金が受けられる可能性がある

断熱性の高い住まいを建てる場合、国や都道府県、市町村といった行政からの補助金を受けられるケースもあります。断熱対策を含めて省エネ対策が施された住宅を対象にした、補助金制度を利用できる可能性があるのです。

補助金を上手に活用することで、初期費用を抑えることも可能です。それぞれの補助金制度には細かな条件や期限などがあるため、事業に関するホームページやお住まいの自治体の窓口などで確認しましょう。

補助金の種類はいくつかあり、リフォームに対する支援を行っている事業もあります。依頼する工務店や建築士と連携して、利用できる補助金制度がないか確認してみましょう。

断熱等級を上げる際の注意点

断熱等級を上げることで多くのメリットを得られることがわかりましたが、よい面ばかりではありません。等級を上げることでともなう注意点を解説します。

等級を上げるとコストも高くなる

住まいの断熱性を高めるためには屋根や外壁、床などに断熱材を充填しますが、天然のウールを使用したものや、ポリエチレン系など断熱材にもいくつか種類があります。

使用する断熱材によって性能やコストが異なり、断熱等級を上げるために断熱材自体に厚みを持たせることもあることから、断熱性を高めるほど材料コストが高くなる傾向にある のです。

また、内断熱や外断熱などの工法の種類もあり、かかるコストも変わってきます。等級とコストのバランスを考えて、どれほどの断熱性を持たせるかを決める必要があります。

ただし、断熱等級を上げることで光熱費の節約ができるうえ、補助金の活用や税控除を受けられる可能性もあります。建設費用だけでなく、支援措置やランニングコストなども含めて、総合的な視点で検討するとよいでしょう。

等級が高くなるほど施工品質が求められる

等級が高くなるほど、住まいの気密性などの施工品質が求められます。気密性の高い家は隙間が少なく、断熱性とあいまって、快適な室内環境をつくり出してくれます。また、断熱性能が高まると、外と室内の温度差によって結露が発生しやすくなるため、気密性も高めて結露を防止する必要があります。

気密性を高めるには、隙間なく断熱材を施工することや、気密性の高いテープの貼り付け、気密シートの外壁への入れ込みなどが挙げられます。ただし、十分な気密性を確保するにはきっちりと施工する必要があり、施工精度の高さや技術力が大切になってくるのです。

このように、等級を高めようとするほど施工品質が求められるため、腕のよい職人や高い技術力を持つ施工会社にお願いする必要があります。

空気がこもりやすくなる

断熱性の高い住まいは高気密であることも多く、空気がこもりやすくなるという特徴もあります。空気の入れ替えが適切に行われていないと、アレルギーの原因にもなるハウスダストや、シックハウス症候群の原因にもなるホルムアルデヒドが住宅内にたまるおそれがあるのです。

そのため、断熱性や気密性の高い住まいにおいては、換気をしっかりとするなどの対策が必要です。ただし、現在の住宅には換気システムの設置が義務付けられており、正しく使用していれば、それほど心配しなくてもよいと考えられます。しっかりと換気できるように、換気設備の定期的な掃除やメンテナンスを正しく行いましょう。

まとめ

断熱等級は住まいの断熱性を示す基準であり、数値が大きいほど断熱性に優れていることを表しています。断熱性が高いと快適な室内環境をつくり出すことができ、冷暖房機器にかかる電気代の節約も可能です。

ヒートショックのリスクも軽減できるなど、体の面にもよい影響が期待できます。ただし建築コストがかかるなどの注意点もあるため、費用と性能のバランスを見て検討するとよいでしょう。

松匠創美では、断熱材の充填や樹脂サッシの採用などにより、断熱性の高い住まいづくりを提供しています。自然の空気の流れを利用して適度に換気できる構造を採用しており、快適な室内環境の実現が期待できます。断熱性の高い住まいづくりを検討するなら、松匠創美にぜひご相談ください。