松匠創美のリフォーム&リノベ

S寺 書院

神奈川県横須賀市

以前に境内のトイレ棟を建てたこともあるS寺から、本堂の離れでもある書院が、老朽化しているのでリフォームしたい、というお話がありました。

書院は本堂の北側に位置し、池のある中庭を挟んで建っています。書院へは、本堂から中庭を眺められる渡り廊下を通ってアプローチするプランになっていました。

また、その渡り廊下とは別に、東側の外部から直接アプローチする事も可能で、北側には墓地、西側には崖が迫っていました。

住職からのリフォームの要望は、風通しを良くしたいというものと、10帖ほどあったキッチンをコンパクトにしたい。そのほか、人の集まりに使用したり宿泊も可能となるように水回り(トイレ、洗面脱衣室、浴室)をキレイにしたい。と言うものでした。

老朽化した建物を調査すると、湿気や過去に増築したと聞いた部分の雨仕舞いが原因で、畳や内装、構造材の土台などを痛ませていたことが解りました。

そこで、当初から建っていた、8帖間3室と縁側は仕上げをやり直すだけに留め、過去に増築した部分をソックリ解体し、新たに水回り部分をコンパクトに建てるという、「減築(床面積が減る)」を行うこととしました。

キッチンは、給湯室としての役割があるので、8帖間3室の中心の出入口の正面に配置し、建具などで仕切らずに、数人の人が一度に出入りしやすい様に計画しました。また、廊下に面しているので常に他人の目に触れることもあり、作業台を無垢の木で造作し、家具に見えるように配慮しました。

そしてキッチンの西側に、トイレと洗面脱衣室、浴室を配置し通風が取りやすい様に引き戸で仕切り、東側には、外部からの来客用にと1坪の玄関を計画しました。

今回は、水回りと玄関をコンパクトにまとめ、珍しい「減築」という方法をとることで、建物の北側外部の湿った土が、風や日光によって乾きやすくなり、建物にとっても、お墓にとっても良い環境にすることが出来ました。

設計:久保歩美・田中伸二
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撮影:スタジオオーピー・中島写真事務所

 建設地:神奈川県横須賀市
工事種別:減築
延床面積:93.01㎡
  竣工:2008年