緑の風が通り抜ける家

神奈川県三浦郡葉山町

今回の計画は、もともと神奈川県葉山町の海のすぐ近くで一軒のRC造の建物を2家族でシェアをして暮らしていたご家族が同じ葉山町でも山側に住まわれているご両親の敷地を分割して木造の新築住宅を建てたいというものでした。

敷地条件は、東西に細長く、149.60平米と数字的には問題ありませんでしたが、位置が、地主であるご両親がお住まい敷地の南側で、これまで家庭菜園をされていた部分にあたるため、面積は減っても家庭菜園は続けられるようできるだけ畑を残したいというご要望がありました。
また、敷地が道路に接していないという、法的な大きな問題も抱えていました。
(法律により、建築物の敷地は道路に2m以上接していなければならない)

もう一つのご要望は、奥様が将来こどもを対象としたお教室を開きたい。との考えをお持ちでしたので、1階にはそのための広い空間が欲しい。その分生活のための空間は少し、圧縮されても大丈夫とのものでした。

まずは配置計画、北側のご両親の家の間取も頭に入れながら、ご希望の畑のスペースの確保から慎重に行いました。
敷地の南側に畑を確保したいので、建物を北側の境界線ギリギリまで寄せる必要がありました。そこで当時新しく運用された法律の天空率を使って計算を行い配置は決まりました。

また、建物の計画は思い切って1階にホールのみを設けて、生活空間はすべて2階にまとめて、それぞれの収納は、ロフトに確保することにしました。
ご夫婦用は階段を登るとリビングの吹抜に面して計画し、子供達用はデスクコーナーから、一人一人専用の梯子付本棚をよじ登るという計画です。
多少、不便があると思いますが、限られたスペースでしたでのこの案を受け入れて下さいました。
お陰様で、2階は四方に風が通り抜ける気持ちの良い空間を確保することが出来ました。

また、敷地が道路に接していないという、家を建てられないかも知れない程の大きな問題も、役所や近隣と話し合いを重ね、時間のかかる許可手続きを無事に終えることができました。

「緑の風が通り抜ける家」は、法律に苦しめられ、法律に助けられることによって、お施主さんの思いが形になったものだと思います。

設計:久保歩美・田中伸二

・松匠創美の家づくり(考え方)はコチラ
・住まいの性能(風向きを考慮して窓を設ける)はコチラ

 建設地:神奈川県三浦郡葉山町
家族構成:夫妻+子供3人
敷地面積:149.60㎡
延床面積:89.42㎡
  竣工:2006年